10  蛟竜艇長第17期会刊行の著作



蛟竜艇長第17期会では前述のように毎年小豆島に集って慰霊の行事を行なう他、会員から原稿を集め、今までに

「貴様と俺の青春賦」
「特攻艇長たち 次世代への遺言」
「出陣賦」

の3冊の本を作ってきた。そのうち「出陣賦」については、「柳井分校」のところで触れているので、ここでは始めの二つについてその内容の一端を紹介する。


◯ 「貴様と俺の青春賦」 〜特殊潜航艇第十七期艇長の航跡〜  平成5年9月刊行 勁草書房


先ず「はしがき」には次のように記している。


「本書は、昭和19年8月、9月に予備学生、予備生徒として、海軍に入り、特攻兵器といわれた特殊潜航艇艇長として訓練を受けそして闘ってきた我々の回想録である。

特殊潜航艇は太平洋戦争の劈頭に日本国民の前にその名をあらわしたが、その実態については知らされることなく、海軍内部でも秘密兵器とされ、艇長となることを志願し(或いはさせられ)たときでさえその実態を知っていなかったのである。そのような秘密兵器を戦争の劈頭に使用することは戦術上問題であろうが、海軍部内ではひきつづきその研究と、艇長、艇員の養成訓練がつづけられた。我々もその一員としてごく短い期間であったが、日夜訓練に明け暮れ、死ととなりあわせの生活を送ったものである。不幸にしてごくわずかの戦死者を出したが、大多数は出撃の日を待つことなく敗戦を迎えた。

戦争が終って早や五十年近く、幸いにして日本国民は平和な生活を送っている。それとともに戦争の虚しさ悲惨さが忘れられようとしている。我々は絶対にこれを風化させてはならないと思い、戦争末期の日本海軍史の一端として、またかけがえのない青春賦として当時の記録を書き残すことにした。

我々の海軍生活の期間は短くその労苦も外地の第一線で戦った方々に比すれば物の数ではないかも知れない。しかし勤務が異なり、その経験や苦労も一様ではなく、したがって、軍隊のあるいは戦争に対する受け留め方も必ずしも一様ではなかった。その意味で本書を、貴様と俺と呼びあった我々の血と、涙と、汗とそして微苦笑の記録として読んで頂ければ幸いである。  

編集代表  中尾英俊  」


第一部として、特殊潜航艇、海軍予備学生・予備生徒、小豆島突撃隊、第十七期艇長の航跡について概要を説明し、第二部を回想録として98名の者が、海軍入隊、旅順や武山での基礎教育時代、大竹潜水学校時代、柳井分校時代、倉橋島(大浦突撃隊)時代、小豆島基地(蛟竜艇長訓練)時代のことを綴っている。

題名、執筆者については次のホームページに詳しく掲載されているので参照願いたい。

http://m-take-web.hp.infoseek.co.jp/senyuukai-17.html


私も「小豆島の訓練 小勝島の記録」として投稿しているが、「小豆島基地」 の項で紹介しているのでここでの掲載は割愛する。


貴様と俺の青春賦

貴様と俺の青春賦




◯ 「特攻艇長たち 次世代への遺言」 平成16年7月刊行  株式会社さんこう社


まえがきには次のように記している。


「(前略)・・・この六十年間のわが国の変貌ぶりはまことに目をみはるものがあります。戦後私たちが死に物狂いになって働いたせいもあって、経済は飛躍的に発展しましたが、反面、日本の弱体化を狙ったアメリカの占領政策等により、日本人の価値観は戦前とすっかり変わってしまいました。また、十年程前から、日本も不況の時代に入り、さらに、平成十三年九月十一日のアメリカの同時多発テロを契機に「アフガニスタン戦争」「イラク戦争」が勃発、あるいは「北朝鮮問題」等も発生して、国内でも自衛隊のイラク派遣等をめぐり賛否両論が激しく闘わされるようになりました。

このような現実を私たち、一度は死と対面した特攻生き残りのかっての艇長たちはどのように考えているのであろうか。この歳になっては「老兵は消え去るのみ」とも思いますが、「一言なかるべからず」と思っている人も大勢いるのではないかと思います。激動時代を生きた経験をふまえて、現在の日本をどのように見るか、またどのようにもって行くべきか、次の世代に何を託そうとするのか、心ある人たちから、それぞれ思いを次世代へん「遺言」として訴えていただいたものであります。

いろいろと意見も分かれていますが、その中から読者に何か訴えるものが一つでもあれば本望でございます。また訴えるものが何もなくても、六十年前にこのような形でお国のために命を賭して青春を燃焼させた若者が大勢いたという事だけは脳裡に留めておいてほしいものと願っております。(後略) 」


第1章では「特殊潜航艇・予備学生などのあらまし」、第2章では「第17期艇長少史」として我々の入隊から終戦までの概略の経緯を記している。第3章を「特攻艇長 次世代への遺言」として、19名の者がその胸のうちを吐露している。寄稿者と題名次のとおり。


矢野 統一  読者の皆様へ捧げる言葉
井口 豊明  若い時の基礎教育が大切
稲本満寿雄  我が愛する孫達へ
臼田 義弘  思い出
角谷  昇  特殊潜航艇回想
坂口 忠次  私の戦中と戦後
真宅 寿男  戦争雑感
高橋 春雄  孫たちに伝えたいこと
武田  実  特攻志願と言い残したいこと
茶珍 衛門  戦後の教育を憂う
津田 由夫  国歌・五分前の精神
中尾 英俊  有事と特攻
蓮井  清  だから言いたかったこと
藤森 芳房  保守と革新
古野 善春  私の繰り言
松沢 孝春  おじいちゃんの戦争体験
矢野 統一  特攻体験者として伝え残したいこと
山田  信  わが愛する孫へ
山本勘一郎  雑書(ざつがき)


私も「孫たちに伝えたいこと」と題して一文を投稿した。資料としてここに収録したので、是非お読みいただきたい。

本書の作成については私も編集委員の一人として参加、経費節減のため私がパソコンで原紙を作成した。当初600部を作成し、ほぼ完売したのであるが、サンケイ新聞に大きく取りあげられ出版社に問合せが多いと聞き300部増刷した。

その後平成19年1月、出版社から自社の責任で更に300部増刷したいとの話があり、今度は書店で注文するなり、アマゾンで購入するなり、直接出版社のさんこう社へ照会すれば誰でも入手することが出来ることとなった。


http://www.sanko-sha.info/products.html


特攻艇長たち 次世代への遺言

特攻艇長たち 次世代への遺言







はじめに
1  海軍志願から入隊まで
2  大竹海兵団から旅順へ
3  旅順海軍予備学生教育部
4  大竹海軍潜水学校
5  大竹潜水学校 柳井分校
6  倉橋島基地(大浦突撃隊)
7  小豆島基地(小豆島突撃隊)
8  戦後の小豆島・蛟竜艇長第17期会
9  戦友会 − 旅魂会
10  蛟竜艇長第17期会刊行の著作
11  靖国神社・遊就館
12  旧海軍兵学校
13  海軍思い出の地・行事
あとがき
■ 資料 ■
資料1  旅順海軍予備学生時代、 私の「学生(生徒)作業簿」
資料2  「旅魂」編纂に関するアンケート回答
資料3  宇都大尉  餞の言葉  士官の心得
資料4  海軍時代によく歌った歌
資料5  佐久間艇長を偲ぶ
資料6  出陣賦(辞世の和歌集)
資料7  「嗚呼特殊潜航艇」碑  その建立と除幕式の模様
資料8  蛟竜艇長第17期会総員集合  参加記録
資料9  佐野大和著「特殊潜航艇」  抜粋
資料10  旅魂会  参加記録
資料11  鉾立(恒見)教官  訓話
資料12  田中穂積を偲ぶ
資料13  旅魂会  最終回資料
資料14  孫たちに伝え残したいこと
資料15  ハワイ 真珠湾めぐり
資料16  基地の地図

特殊潜航艇「蛟竜」−高橋春雄・海軍の自分史−

特殊潜航艇「蛟竜」−高橋春雄・海軍の自分史−