中野区にも老人大学として「ことぶき大学」があることを知り、平成14年5月家内と一緒に入学した。場所は中野駅近くのなかのゼロの小ホール、授業は5、6、9、10、11、12月の木曜日の午前が原則である。この年に入学したのは約170名ほどで、住んでいる町によって16の班(分教場)に分けられた。私たちは10班(江古田分教場)で、私たち二人のほかに、西出英子、百瀬愛子、樋口喜美代、須田聖紀代、遠藤幸子、高山喜義、田中一久、原田洵一の顔ぶれであった。
授業はさまざまの分野の方が講師として招かれ有意義なものであった。3年間で大学を卒業すると次は大学院コースである。なんとか4年間通い大学院も卒業させていただいた。さまざまの思い出があるが、そのいくつかを紹介する。
◯ 青空教室 都立葛西臨海公園 平成14.5.23
授業が始まって3回目のこの日、青空教室「はじめまして! 青葉の中で語り合おう」のテーマで1年生と2年生が葛西臨海公園に集まった。地区ごとにグループを作り一緒に行動することとなった。私たちの江古田グループには2年生の竹田さんや多賀谷さんがいて、授業のこと、分教場学習のことなどいろいろと教えてくれた。すぐ近くに住んでいる人ばかりなので親しみが持てた。竹田、多賀谷のお二人にはその後も分教場学習やパソコンの講習その他で大変お世話になり、大学院卒業後も地域活動などで引続きお世話になっている。
◯ パソコン講習 平成16年 前期ゼミ学習
16年度の前期ゼミは「パソコン」「やさしいくらしの経済」「中野の国際化」の三つのうちから選択することとなった。私は「バソコン」を選んだ。講師はINFOTEC 鰍フ有田鴻児先生。午前中2時間、新宿にある先生の会社に5日間通って教えていただいた。主なテーマは「Eメール」と「インターネット」であった。受講者は7名程度の班に分けられ私は班長に任命された。講義が終りに近づいた時、先生から5項目のアンケートが示され、その回答を各班長がとりまとめ提出するよう求められた。私がとりまとめ提出した報告を紹介する。
ネットサーフィン受講報告(B班)
平成16.9.2
B班 班 長 高 橋 春 雄
副班長 藤 原 克 彦
はじめに
私達は本年8月2,3,5の3日間にわたり、新宿木村屋ビル内インフォテック(株)におけるIT講座の夏期講習においてネットサーフィンを学習致しました。
受講生約20名は三つのグループに分けられ、私たちはB班ということになりました。メンバーは石黒陽子、大高正子、片山多恵、川真田和雄、須藤ハツ、高橋春雄、藤原克彦の7名でございます。
受講終了にあたって全員にアンケート用紙が配られ、五つの項目について回答を書き班長に提出するよう求められました。以下そのアンケートの回答に基づき、B班の受講の状況・成果等を報告致します。
本 文
私自身、実は「ネットサーフィン」とは何のことかよく分からないまま申し込んだのですが、「インターネット」に接続して日本だけでなく、世界中の「ホームページ」にアクセスすることのようでございます。
私たちの班では大部分の方がすでに自分のパソコンでインターネットを楽しんでおられる方が大部分のようで、より一層広い知識を得たいと受講された方が多かったようです。
今度の講座の特徴はなんと言っても有田先生を中心とした講師陣の充実した教え方にあると思います。20名ほどの生徒に対して、有田、浜窪両先生が実際のパソコンの画像を投影しながら説明する分かり易い講義、数名のインフォテック所属のプロのアシスタント、それに昨年ここで学んだ、大学院の先輩方数名のボランテイア活動によるアドバイス、まさにマンツーマンの状態で勉強することが出来、理想的な環境で勉強することが出来ました。
ホームページのアドレスをURL と呼ぶそうですが、その中の「CO.」とか「JP」等の持つ意味も理解出来、「お気に入り」に登録する方法や注意すべき点も学びました。「YAHOO」とか「GOOGLE」その他沢山ある検索機能を使うと考えられる大抵のものが出てくることも知り、また「翻訳サイト」を利用すると無料で外国語の翻訳、日本語の翻訳が出来ることなども新しい発見でした。
アンケートにはこの講座を契機に地域活動にどのように関わりたいと思うかというものがありました。これについては折角Eメールを習ったのだから、これを生かして地域の方、特にことぶきの方と連絡を密にして、グループ活動が出来るよう望んでいる方が多くいます。先輩の大学院の方々は昨年講習を受けた仲間で、講習の後もお互いにメールで連絡をとりあい、時々あつまったり、旅行したりして親睦を深めておられる様子、大いに参考になるのではないかと思います。
五つあったアンケートの最後の問いはテーマをきめてネットサーフィンを行いまとめて下さいというものです。
私たちの班の方の回答をみると全員の方がそれぞれのテーマを選んでネットサーフィンを行い、それなりの成果をあげているようです。なかなか興味深いと思いますので、簡単に紹介してみます。
@ 「自分の名前」を検索、自分と同じ名前の人が多くいることを発見、その方々の多彩な活躍ぶりを知ることができたと言っております。
A 「青森のねぶた」を調べ保存会や伝統を守る方たちが、この行事を残そうといろいろ活躍していることを知りました。
B わが家の小さい庭をきれいなガーデンに変身させたいと、いろいろ調べた方もおります。
C 「高山植物」に挑戦、数だけは物凄く多いけれども、的を得ていないものも結構多くセレクトが大変という方もおります。
D ロシアの、日本大使館からのリンクで、大統領官邸を訪問、翻訳ネットを使ってクレムリンの中にまでおジャマして大統領の肉声も聴いたという方もいます。
E 地元江古田地域の史跡を調べ、哲学堂、古戦場の碑などを検索、件数の多い中から取捨選択するのに苦労した方もいます。
F 「邪馬台国のヒミコ」を調べ、いろいろの説のうち対立する意見も検索して自分の説もまとめることが大切と説く方もいます。
おわりに
パソコンに馴れていた方もいたとは言え、3日間の講習で班の皆さんがこのようにいろいろのテーマで調べたという事実は驚くべきことと思います。小さいパソコンが一つあるとこのように楽しめるのです。
日本国内は勿論のこと、翻訳サイトを使えば外国語も敬遠しなくともよいかも知れません。また電子メールで仲間と気軽にメッセージのやりとりも出来るのです。このような文明の利器を使わない手はありません。積極的に使いこなして、興味のある分野の研究に活用し、また地域の方々との連携を密にして充実した毎日を送りたいものです。
◯ 分教場学習と「江古田散歩」作成 平成16年7月〜18年9月
ことぶき大学では毎年7月に初夏の、また9月には秋の分教場学習と称して、各地区ごとにその全員を集めて学習を行うことになっていた。江古田地区では毎年江古田地域センターで実施してきた。1、2年の時は先輩のやることを見たり聞いたりしていればよかったが、3年生になると委員としてその準備の手伝い、司会、議事録の作成などを命ぜられ、翌年はお前達がやるのだぞとおどかされた。
江古田地区で大学院まで進んだのは私達夫婦と西出英子、百瀬愛子、樋口喜美代、田中一久のわずか6名である。今更逃げ出すわけにはいかない。なんとか皆で力をあわせて成功させたいと思った。それで16年の初夏の学習が7月1日に終了して間もない7月24日、第1回の私たちの会合を開き、12月までに5回、17年に入って2回と合計7回の会合をもって意見交換を行った。
従来の実績を調べると「ゴミ処理の問題点解決」「江古田の歴史と地域の子どもたち」「江古田の森の昔とこれから」などテーマを決め、講師を招いて講演というスタイルが多く、秋には自分たちで作った「江古田新聞」を紹介しているようである。
私たちはそれに加えて、何か自分達で研究し、その結果を発表する方向で検討することとなり、最終的に自分達が住んでいる江古田地域の史跡、神社仏閣、石仏等を自分たちが分担して実際に訪ねて、その結果をまとめるとともに、各自がテーマを決めて論文を書き、これらを一冊にまとめることとなった。その結果出来上がったのが「江古田散歩」である。地域内の目ぼしいものを紹介、全員がレポートを書いた。私のテーマは「江古田川・妙正寺川の上流・下流を訪ねて」、家内のは「江古田のお茶」である。
7月1日の夏期分教場学習では学生36名のほか、地域センターの方、来賓、講師の参加を得て開催された。この日の主なテーマは私たちの研究成果「江古田散歩」の発表と、歴史民俗資料館主査の「200年前の江古田を想像する」の講演であった。私たち手づくりの本を参加の皆さんに差上げ、また地域センターや、中野図書館、江古田図書館にも寄贈した。ことぶき大学時代の良き思い出である。
ちなみに同じ年の10月25日に開催された「秋の分教場学習」の主なテーマは、私達が作った「みどり新聞」の紹介と、中野地域防災担当の根津力三氏による講演「中野区の水害の実態と対策」であった。「みどり新聞」については項を改めて説明したい。
◯ 「みどり新聞」の作成 平成17年9月
大学院になると平成17年6月に、新聞教育研究所所長大内文一氏による「手づくり新聞を作ろう」の講義が2回あった。そして新聞の作り方について種々説明のあと、夏休みの宿題として自分たちで新聞を作り9月8日までに提出すること、そして9月22日の授業の日に発表、その講評をすると宣言された。今まで毎年先輩がやってきたそうで彼等が作った新聞も紹介された。
地区を基準に11の班が編成された。私たち江古田組は5班となったが、今回はで我々6名のほかに、上高田の依田ふじ子、新井の西村静枝、田中鈴子の3名が加わって9名で作ることとなった。
もとより新聞作りなど全員が始めてのこと、しかしなんとかまとめなければと何回か集まって話しあっているうちにだんだんと向うべき方向が見えてきた。
新聞の題名・・従来は江古田新聞だったが、上高田、新井が入ったので新しい名前を模索、この地区は緑が多いことから「みどり新聞」とした。
メインテーマ・・歳をとっても毎日をいきいきと送りたいとの願いをこめて「いきいきライフを求めて」に決定。
そのために利用出来そうな施設があるか、パソコンなど簡単に習うところはないか、いきいきと生きている人はいないか、このような活動をしているグループはないかなど、各自調べて資料を持ち寄る。
そのほか各自随筆、俳句、短歌、川柳、詩、絵など、何でもよいから書いて持ち寄る。
そんなことを申し合せて皆さんが懸命に努力した結果、次のように多くの原稿があつまった。
・ 地域のお年よりの数の調査、地域別、年齢別一覧表
・ 施設の調査 松ヶ丘シニアプラザ、みずの塔ふれあいの家、江原キャンパス
・ 体験記 童謡・唱歌を歌おう 楽しい折り紙
・ 料理教室の杉山雅義さんの随筆「食べることは生きること」
・ 訪問記 身体と頭を使う 友達を作り奉仕の心 加地武生さんに聞く
・ 中野友愛ホームでの老人会による奉仕活動
・ みずの塔ふれあいの家 お手軽健康体操
・ こどもたちとふれあう 「かみたかだ徒然会」
・ 「ことぶき新井」はこんな活動をしています 「行事記録」
・ 「ことぶき新井 七福神」について
・ 人生の楽しみに I T あり
・ 油・断・快適! 下水道
・ 大学院生 研究結果を一冊にまとめ発表
・ 体験記 防犯パトロールに参加して
・ 俳句 哲学堂の四季
・ 絵と詩
・ 「たきびの歌」発祥地
・ 随筆 歴史のある緑の街で
・ 寺の街高田
・ 随筆 哲学堂にカイダンありますか?
・ 随筆 シルバーバスのつぶやき
まさに嬉しい悲鳴である。折角苦労して作ってくれた原稿だから全部載せたい。しかも単純に文章を書くような訳にはいかない。割付けが大変な作業である。横書きならパソコンで馴れているから平気だが、縦書きでしかも見出しをつけるとなると容易ではない。メンバーのなかでパソコンに馴れているのは私だけ。なんとかしなければと四苦八苦の末、ようやく「みどり新聞」第1号として、B4の大きさ8頁にまとめあげ提出した。
9月22日の授業には、私どものものも含めて11班全部のものが紹介された。大きさは全部B4判、ページ数は2ページが4件、4ページが5件、5ページが1件で、8ページは私たちのものだけであった。先生の講評も良く一同苦心の甲斐があったと喜びあった。そしてこの新聞を取材した方や施設にも差上げ、また秋の分教場学習でも紹介した。
4年間学び、数えきれない思い出を残したことぶき大学も平成17年12月8日の閉講式で幕を閉じた。
ことぶき大学 青空教室 都立葛西臨海公園 平成19,5
ことぶき大学 パソコン講習 平成16.8
史跡探訪の私たち 平成17.6
初夏の分教場学習 江古田地域センター 平成17.7
ことぶき大学 閉講式 第5班の仲間と 平成17.12,8
「日々是好日」 −高橋春雄・私の履歴書−