私の故郷新潟県小出町の青島というところには、上之山神社という鎮守様があり、元日の朝には父に連れられて兄弟一同初詣に出かけ、字が上手になると言われて書き初めを持って行き堂の中へ貼ってきた。夏祭りにはここで盆踊りがあった。海軍に入る時もここで出陣祭をしてもらったし、私が外国に行く時とか病気の時には母がこの鎮守様のお守りを送ってくれた。
青島地区にはお寺はなかったが、お盆の時は一家揃って墓参りをし、春と秋の彼岸には家の入り口で迎え火、送り火を焚いた。父も毎朝神様にかしわ手を打ち、仏前で般若心経をあげていたし、よく親戚や近所の方が集まって念仏やご詠歌を大勢で唱えていたように記憶する。
14 歳で上京してからは神社やお寺と縁が遠くなってしまったようだ。記憶に残るのは東京逓信講習所普通科在学中、昭和14年秋に修学旅行で伊勢神宮、京都の清水寺、奈良の興福寺に参詣したことや、海軍に入って旅順海軍予備学生教育部で訓練を受けている時、元日に一同で関東神宮に参拝したことくらいである。戦後は初詣では近くの須賀神社、氷川神社、東福寺、それに明治神宮、川崎大師、靖国神社など大きな寺社にお参りするくらいで過ごしてしまった。
会社勤めも定年近い年頃になるとだんだん信心深くなるのか、昭和58年京都でのクラス会に出席の途次、家内と二人で南紀経由で那智山(西国札所一番)に立ち寄ったのがきっかけで、札所めぐりをするようになった。
定年後は時間的な余裕が出来たこと、喘息を患い何回も入退院を繰り返し神仏にすがる気持になったこと、謡蹟めぐりに興味を持ったことなどで、寺社詣でに一層拍車がかかるようになった。謡曲の会合、クラス会、戦友会、兄弟会等で地方にでかける時は、前または後に1,2日追加して、謡蹟めぐりと寺社詣でに精出してきた。長い歴史の風雪に耐えて残った神社やお寺には、なんとも云われぬ厳かな雰囲気があり、自然に頭がさがる。更に祀られる祭神や謡曲に関係する人々を偲び古えに思いを馳せることも多い。
西国、秩父、坂東と百観音にお詣りし、昨年から今年にかけて念願の四国八十八ケ所も結願することが出来た。それぞれの神社やお寺で撮った写真、いただいたご朱印、由緒書きなども膨大な数が未整理のまま放置されている。この機会にアルバムやご朱印帳を取り出して、その足跡や想い出をたどってみた。御朱印をいただいた寺社一覧表参照。
病い得て苦しきときは医者だのみ お薬さらに神、仏さま
上之山神社(村の鎮守様)(平6.4)
お墓詣り 新潟県小出町青島 (平1.4)
清水寺(修学旅行) (昭14.10)
予備学生教育部 関東神宮参拝 (昭20.1)
須賀神社 自宅近く (平11.1)
明治神宮 (平13.1)
「日々是好日」 −高橋春雄・私の履歴書−