資料   「日々是好日(私の履歴書)」より     平成14年2月

           ま え が き


 始めなき始めに始まって、終りなき終りに終る無限の時間。また、月なきみ空に輝く星空の彼方に広がる無限の空間。この無限の時間と空間の中にあって一瞬と時と一点の空間を生きる小さな存在。しかし、小さい存在ながらも七十数年を生きて来たのは事実である。

 天地人という。天の時、地の利、人の和と解釈する。

 天の時、良い時代に生きたものである。人類の歴史においてこれ程の激動の時代があったであろうか。

 地の利、日本というこれ程恵まれた地に生まれ育ったことを感謝する。

 人の和、これほど良き父母兄弟、祖先、先輩、同僚に恵まれたのは感謝である。

 もっとも、このことは、何時いかなる所においても同様に言える言葉かも知れない。別言すればいずれは心の問題かも知れない。

 私自身、すぐれた家系の家に生まれた訳でもなく、お金がある訳でもなく、人並み以上に病気もしてきた。 戦時中は特攻隊に志願して特殊潜航艇に乗っていたので、もう少し戰争が長びいておれば当然「水漬く屍」となっていた筈であり、会社定年後は喘息その他の病いで、何回となく入退院を繰り返し、何時亡くなってもおかしくない状況であった。

 しかしながら、現時点で過ぎこし方を振り返ってみると、多くの人に支えられながらこの人生を、充実した気持ちで、後悔することなく、有難く有難く、感謝しながら、楽しく生きてきたと実感している。そして苦しい日、楽しい日、照る日、雨の日、春の日、冬の日等々、すべての日が好い日であったし、好い日であると思えるようになった。

 喜寿という節目の年に何か記念になるものをと考え、平成11年9月に作成した「定年後の足跡」を補足し、定年前の足跡もたどってみようと思い立った。

 前著と同様、文字、写真の入力、レイアウトなどすべて私の手作業によるもので、見苦しい点はご了承願いたい。


     平成14年2月吉日(満77歳)


                        高 橋 春 雄


日々是好日(私の履歴書)目次


T 私の履歴書篇

1 ふるさと・父母・祖父母
2 小学校時代・農村の行事   
3 逓信講習所入学・父の死・小出局 
4 高等科・官練進学     
5 官練卒業・出征・大竹海兵団へ  
6 旅順予備学生教育部   
7 特殊潜航艇乗りの訓練 
8 復員、復職(電信局)学校、会計士試験
9 結 婚
10 KDD発足、経理部勤務、太平洋横断海底ケーブル建設資金調達  
11 ニューヨーク事務所勤務(外資調達)
12 ニューヨーク事務所(アメリカの生活)
13 平凡なサラリーマン生活 
14 海外出張
15 KDD事件 
16 KDD定年退職 
17 定年記念旅行 
18 私の履歴書 国際ケーブルシップ株式会社(KCS)
19 謡曲1(KDD宝生会、末広会) 
20 謡曲2(渡雲会) 
21 謡曲3(教授嘱託会―行事参加) 
22 謡曲4(教授嘱託会 謡曲名所めぐり)
23 謡曲5(謡蹟めぐり)
24 謡曲6(弥生会)
25 謡曲7(青葉宝生会)
26 謡曲8(謡の会−武蔵野会・田無文化祭)
27 喘息発病 入退院をくり返す 
28 車の運転 
29 戦 友 会
30 東京小出会
31 パソコン
32 本づくり1(まえがき)
33 本づくり2(自分自身関係)
34 本づくり3(身内関係)
35 本づくり4(クラス会、職場、戦友会関係)
36 本づくり5(謡曲−渡雲会−関係)
37 本づくり6(謡曲−KDD宝生会−関係)
38 本づくり7(謡曲−教授嘱託会、その他−関係)
39 寺社詣で(まえがき)
40 寺社詣で(西国札所)
41 寺社詣で(坂東・秩父札所)
42 寺社詣で(七福神詣で)
43 寺社詣で(四国88ヶ所)
44 寺社詣で(その他の寺社と御朱印)
45 寺社詣で(靖国神社)
46 好きなうた(小学校のころ)
47 好きなうた(青春のころ)
48 好きなうた(軍歌)
49 好きなうた(民謡)
50 好きなうた(ナツメロ)
51 好きなうた(漢詩)
52 好きなうた(和歌)
53 好きなうた(謡曲)
54 好きなことば
55 金婚を迎えて
56 近 況


U 資 料 篇

@ 日記、書信、投稿記事等

年月   題 名             掲載誌等

昭14.6 両親、弟あての手紙 現存最古の手紙
昭14夏 男児立志出郷関 小学校同窓誌「若鮎」
昭19.9 19歳 出陣の頃 日記抜粋
昭20.2 特攻隊志願前後 作業日誌抜粋
昭20.2 宇都大尉 餞の言葉 士官の心得 戦友会編「旅魂」
昭37.6 ニューヨークより妻へお手紙 NY着任直後の手紙
昭62.11 退院後やってみたいこと 喘息二度目の入院時日記
平12.4 まえがき 金婚記念写真集「比翼連理」
平12.4 あとがき 金婚記念写真集「比翼連理」
平12.7 謡曲について 日比谷同友会会報 150号
平13.6 まえがき 経理部OBだより
平13.6 あとがき 経理部OBだより
平13.7 編集後記 弥生会500回記念誌「やよい」
平13.7 謡蹟めぐり、寺社めぐり 弥生会500回記念誌「やよい」
平13.8 四国八十八ヶ所と勤行 −
平13.9 臨機応変の妙 教授嘱託会会報 140号
平13.11 座談会 教授嘱託会の来し方−行く末  教授嘱託会会報 141号
平14.6 私と渡雲会 渡雲会65周年記念誌


A 宝生流教授嘱託会謡曲名所めぐり ガイドブック

平成7年曾 越前・若狭・丹後・丹波への旅 参加者に配布
平成8年度 北九州・長門路の旅      参加者に配布
平成9年度 佐渡の旅 参加者に配布
平成10年度 北陸路の旅          参加者に配布
平成11年度 南紀の旅           参加者に配布


B 御朱印をいただいた寺社(除、掛軸、色紙)一覧表

C 謡蹟めぐり一覧表(府県市町村別)

D 年  表

E 人名索引

F あとがき



           あ と が き

 平成11年9月、「定年後の足跡」を作成した時も病気入院がきっかけであったが、今回も同様であった。平成12年には時々持病の喘息の発作をおこし、1月、5月、11月と3回も入退院を繰り返す羽目になってしまった。それぞれ2週間ほどの入院であったが、体調が回復し時間を持て余すようになると、ベッドで過ぎ来し方を想いおこしながらメモを書きとめていた。このメモの蓄積がなければおそらくこの書物を作る気にはならなかったであろう。その意味では入院もまた貴重な体験であった。

 今回は満77歳(喜寿)を記念して、定年前の足跡も取り上げ、77年間を振り返ってみることとした。記述は日経新聞の「私の履歴書」に倣っておよそ30項目に分類、1項目を1頁にまとめることを原則としたが、短歌を1、2首を添えたり、また同じ見開きの他の頁には関連する写真を収録するなどして変化をもたせた。

 項目は大きくおよそ30に分類できたが、私にとって関心の深い「謡曲」「本作り」「寺社詣で」「好きなうた」の項目については、1頁にまとめるのが難しく数項目に分けて記述したので、全部で56項目になってしまった。

 また、本文の舌足らずの点を補足する意味で、前回同様資料編を設け、日記、書信、投稿記事、ガイドブック、寺社めぐり・謡蹟めぐり一覧表などを収録した。

 一通り出来上がった原稿を読み返しているといろいろのことが思い出される。

 雪国の山村で育ち、小学校を終えてすぐに上京、逓信省関係の学校を経て卒業と同時に予備生徒として海軍に入る。特攻隊を志願して特殊潜航艇の訓練を受けている時に終戦。戦後は逓信省に復職、途中からKDDに移り、定年退職まで勤務する。定年退職してから早くも18年が経過しようとしている。振り返るとまさに夢のようで、遠い昔のようでもあり、ついこの間のようにも思える。

 この間、学校にあってはひたすらに勉学に励み、軍隊にあっては身を挺してお国のために精励し、会社にあっては会社のために働いてきた。戦前の貧しい時代、戦後の困難な時代であったが、精一杯頑張って来たという思いがあり、悔いのない人生であった。また、その甲斐あって国も豊かになり、家庭にも恵まれて来たと感じている。現在は何物にも束縛されず、趣味の世界に悠々と遊ぶ心境で最高の幸せをかみしめている。

 定年退職以前のことは幻のようにだんだん霞んできてしまい、結局、現在最も興味を持っている「謡曲」「寺社詣で」「パソコンによる本作り」等に多くのスペースを割く結果となってしまったようである。

 私の謡歴も48年になった。KDD宝生会、渡雲会、教授嘱託会その他の会合に出来るだけ参加するように心がけており、謡蹟めぐりにも精を出している。謡の会に参加すると役を割り当てられるので、否応なしにある程度稽古せざるを得ない。これがボケ防止に役にたっているのではと思う。本年6月には2日間に亘る渡雲会65周年記念大会があるので、その準備やらお稽古に時間をとられそうだし、嘱託会の全国大会、東北大会、名所めぐり等出席の回答を出してあるので今年も結構忙しくなりそうだ。

 20年間に訪ねた謡蹟もかなりの数になったので、本書作成を契機に「謡蹟めぐり一覧表」を作成してみた。訪ねた年月日、所在地、関連曲目、それに1件ごとに簡単な説明を付してパソコンに入力、これを、年月順、地域別、関連曲目別の3種類に分類印出してみた。本書には地域別のものおよそ2,600件を掲載した。また、謡曲名所めぐりのガイドブックは、私には教授嘱託会時代のよい思い出なので収録させていただいた。

 「寺社詣で」も謡蹟めぐりと表裏一体の関係にあり、私の生き甲斐みたいなものになってしまった。お寺や神社には何かしら心を和ませるものがあるような気がする。いただいた御朱印もかなりの数になったので一覧表を作ってみた。ここに収録した寺社は514を数えるが、この他に西国、坂東、秩父、四国の札所の掛け軸と、七福神の色紙が多数ある。ここまで無事に生きてこれたのも神仏のおかげと感謝している。

 「本作り」も楽しみの一つである。同級生、戦友会、親戚関係、謡の会、勤務先のOB会等さまざまな本作りを手がけたが、皆さんが喜んでくれるのが何より嬉しい。この自分史が一段落したら、今度は「謡曲の自分史」をと思っており、宝生流の180曲全曲を予定しているが、まだ48曲しか進んでいないので、まだ当分楽しめそうである。

 最後になったが、本書作成にあたっては家内に諸々の面で絶大な協力を得たことを付記させていただく。

 お世話になった多くの皆様方に心から感謝の気持をこめて・・・・ 


          平成14年1月28日記

                         高 橋  春 雄



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