資料   現存する私の最も古い手紙
     ―小学校卒業、逓信講習所普通科入学2ヶ月

    14歳の時の両親、弟あての手紙 昭14.6.10


                          東京 高橋 春雄
 

 御親切なるお手紙有難たうございました。家の方ではさぞ忙しい事でせう。お察し申し上げます。家の人は皆健者の事と存じます。僕も相変ず元気です。南京虫よけの寝具有難たうございました。今でも着てねます。教課の進度は通信速度ではかられます。今練習の時は一分四十字位です。昨日(金曜日)の週末競技は全部出来たので嬉しうございました。今後尚頑張る積りです。一学期試験は七月の十日頃でせう。もうそろそろ試験勉強を初めました。

 日曜には皆が大体遊びに行きます。僕も大体遊びか散歩に行きます。此の前の日曜には何処へも行きませんでした。又明日の日曜は僕等一回生四組が多摩川のずっと西迄ハイキングださうです。家では田植で一番忙しいと言ふのにすみませんが仕方ありません。行かせていただきます。又月末の決算は別に決算と云ふものはやって居りませんが、収入支出はつけて居ります。それによると学用品、切手、葉書代、風呂券、積立金、茶菓代等を引いて、今計算して見たら、舎監に預けたもの、伯母さんからいただいたもの、家からいただいたお金等全部を数へたら、一四円八六銭でした。今度は帳面にきれいにつけておく積りです。又手当の方は別の紙を添付しましたから、それを見て下さい。

 今日寄宿舎で二回生卒業の記念写真をとりました。三寮の者全部が入ったのです。それと新潟県人の写真と部屋の者ととりました。二回生もあと二週間少しで卒業し現業へつくのです。僕も入ってから二月以上になりました。本当に月日の立つのは早いものだと思ひました。全く少年易老学難成です。此の間四、五日には新しく入る二回生の入学試験がありました。東京は物凄く大勢受けた様でした。小出町でも受けた人はありませんでしたか。

 田舎では今が一番忙しいでせうね。それを此ちらへ来てお手傳ひの出来ないのは残念だが仕方ありません。然し良い成績を取って御返しをしようと思って居ります。一学期試験が終るとすぐ夏休ですからその時に良い成績をもって帰る様努力致します。

  皆 様  六月十日


 澄雄君。お手紙有難たう。僕は元気です。弥彦様へ行って来たさうですね。面白かったでせう。僕も今日級の者は先生と一緒に遠足です。君が毎日田んぼへ出て働いて居るのが目の前に浮びます。僕の代り迄よくやってくれるさうで僕は嬉しいですよ。これから後も頼みますよ。僕も一生懸命勉強しますから、澄雄君もひまがあったら勉強して下さい。それでは体を大切にして家の人の云ふ事を聞いて一生懸命勉強して下さい。又働いて下さい。お願ひ致します。嘉雄や岩雄君にもよろしくね。夏休に帰ったら一緒に話しませうね。

  澄 雄 君   六月十一日    春雄より



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