以上に述べた西国、坂東、秩父、四国88ヶ所、七福神のほかにも随分沢山の神社やお寺にお詣りしてきた。掛軸や色紙のほかに、神社やお寺で御朱印帳にいただいた御朱印の数を数えてみたらおよそ600個になっていた。
どうしてこのように沢山の神社やお寺にお詣りする気になったのか、今でもよく説明出来ないが、次のようないろいろの要素が重なりあってのことと思う。 第一は自分で病気してみて、神仏にすがるような気持になり、幸い全快とは言えないが、規則的な服薬・吸入を続ければ日常生活に支障ない程度に回復できたのは神仏のおかげと実感できたこと。
第二は趣味の謡曲に関連する神社仏閣が沢山あり、謡蹟として参詣、その曲とこことの関係を思い、往時を偲ぶことに魅力を感ずるようになったこと。
第三は会社も定年となり、在職中仕事一筋で報いることのなかった家族への罪滅ぼしに、家族と一緒に旅行したい気持になってきたこと。
第四は何百年という長い歴史を経てきた神社仏閣には、言葉で言い尽くせない人智を超えた厳かなものがあり、これに惹かれたこと。
私が最初にいただいた御朱印は、昭和63年7月、福島県柳津の虚空蔵様のものである。前年喘息発作などで3回も入院し、ようやく小康を得たので、そのお礼詣りに私の生まれ本尊である虚空蔵様に出かけた時のものである。
その後、神社やお寺にお詣りする時にはたいてい御朱印帳を持参するようになった。そして出来る限り御朱印とその寺社の由緒書きをいただく。私にとっては由緒書きは謡曲との関係を知る貴重な資料なのである。
時間外、無人、留守等で御朱印をいただけない所も結構多い。しかし、御朱印帳もかなりの冊数になっているので、今回調べて一覧表にしてみたら600ほどの数字になっているのに驚いた。
御朱印にもいろいろのものがある。朱印のみのもの、達筆で書かれたもの、判読困難のもの、和歌や解説付きのもの等々。北は青森市の善知鳥神社から南は鹿児島県開聞町の枚聞神社まで、伊勢神宮、京都奈良の古寺、熊野古道、出雲の神々、四国の寺々、高野山、鎌倉の古寺、出羽三山等思い出は尽きない。
柳津の虚空蔵(福島県) 私が最初にいただいた御朱印
伊勢神宮内宮(三重県) 朱印と日付のみ
身延山久遠寺(山梨県) すばらしい筆跡
谷汲山華厳寺(岐阜県) 私には読めない
宗像神社(福岡県) 別葉添付の珍しい例
雲洞庵(新潟県) 和歌が記されている
本妙寺(熊本県) 文字の数が多い例
善知鳥神社(青森県) 一番北の御朱印神社
枚聞神社(鹿児島県) 一番南の御朱印神社
「日々是好日」 −高橋春雄・私の履歴書−