糺の森

謡蹟めぐり  班女 はんじょ

ストーリー

美濃の国野上の宿の遊女花子は、東国へ下る途中の吉田の少将と契りを交わして以来、後日を約して去った少将を想い、形見に交換して扇ばかり眺め入って勤めに出ません。宿の長は怒って花子を追い出してしまいます。
東国からの帰り、少将は再び宿を訪れますが、花子がいないのでやむなく帰り、賀茂の社へ参詣します。するとそこへ花子が現れます。彼女は少将への恋慕がつのって物狂となり、今は班女と呼ばれています。神に祈願を捧げる班女に、少将の供の者が狂いの芸を見せよと言います。班女は悲しみながらも形見の扇を手に、玄宗と楊貴妃の故事を語り、捨てられた班女と同じ身の寂しさを思い、少将のつれなさを恨んで狂おしく舞います。やがて少将はその扇に気がつき、自分の扇と比べて班女が自分の探していた花子であると知って再び逢えたことを喜びあいます。(宝生の能、平成10年2月号より)

野上の長者邸跡(名所めぐり参加記録分担執筆) (平4・5記)

関ヶ原町には野上という部落が現在も残っており、この物語も語り継がれているとのこと。また、現在四軒ある岩田邸宅の中の一軒が、当時花子のいた長者邸だったということで、下調べの時はこの岩田邸を訪ねられたそうだ。今回もその邸宅を車中からでも眺めようということになった。
しかし、岩田邸は道の狭い旧中山道沿いにある。大型バスがやっと通れるような道である。道の両側には古い家が立ち並んでいて、どの家も同じように見える。私ども二号車は一号車の電話連絡を待ってから探すので、タイミングがずれ、とうとう見つけることが出来なかった。

野上の宿付近 野上の宿付近 岐阜県関ヶ原町 (平4.5)

このあたりは関ヶ原の古戦場にも近く、両側が山になっているので、東西交通の要衝の地だったのであろう。この道を往来する旅人がこの辺りで宿をとり、旅の疲れを癒すうちに遊女と懇ろになることは充分考えられることである。吉田の少将と花子もこのあたりで語りあったのだろうか・・・それにしても花子が大曲「隅田川」のシテ即ち梅若丸の母とは驚いたもの・・・など空想にふけっていた。

バスが突然停車したので、前方に目を転ずると、狭い道の一号車の前方に車が二台ほど駐車しているが、運転手がいないのでバスは進むことができない。ガイドさんはバスから降りて、駐車している車の運転手を探しているようだが、なかなか見つからない。時間は刻々過ぎる。私どももだんだんイライラしてくる。そのうち二台目の車の運転手が見つかったのか、やっとバスが通れそうになった。
一号車が少し動きだした。慎重に慎重に運転している。駐車している車スレスレに通ると左側の立木が邪魔をする。やっとの思いで一号車が通過した。今度は私ども二号車の番である。しかし、さすがプロ、慎重な運転とガイドさんたちが立木を引っ張ったりしての協力が効を奏して、ようやく難関を突破することが出来た。期せずして車内から拍手喝采が湧き起こった。運転手さん、ガイドさん、ご苦労さま。

関ヶ原町歴史資料館(名所めぐり参加記録分担執筆) (平4・5記)

館内には能「班女」の大きな画が展示されている。不破郡垂井町の米沢二信氏の作品の由である。そしてその側には「謡曲班女のあらすじ」と題して、私どもには馴染みの班女の物語が記されている。しかし、前述の野上の長者邸を訪ねたおり、家宝の班女の扇や文書を、この資料館に保管をお願いしてあるとのことだったそうだが、資料館の方の話では預かっていないとのことで拝観することは出来なかった。なお、資料館の案内書によると、近くに「班女の観音堂」がある由である。

関ヶ原館 関ヶ原歴史資料館  岐阜県関ヶ原町 (平4.5)

(補足 平10・5記)

資料館で入手した資料を調べていたら、ここで昭和61年4月から10月にかけて「謡曲、班女・隅田川(梅若)特別企画展」が、関ヶ原町教育委員会、関ヶ原町歴史民族資料館の主催、東京都墨田区木母寺の協賛で開催されたようで、その展示目録が見つかった。
班女の木像、班女の画、梅若丸の木像、木母寺縁起絵巻、妙亀(梅若丸の母、つま本曲のシテ花子)塚・梅若塚等のパネル等多数が展示されたようだが、目録の中には本文記載の「班女の扇」は見当たらなかった。このような展示は大変珍しいと思うので、同じような催しがあったら是非拝観したいものである。目録の表紙に描かれた貞算筆という「班女像(旅姿)」の写真を掲げてみる。

班女旅姿 班女像(旅姿) 関ヶ原歴史資料館 (平4.5)

糺の森  京都市左京区下賀茂泉川町 (平10・5記)

糺の森は花子が吉田少将と再会する場所である。「加茂」の項に写真を掲げたが、賀茂川を隔てて撮ったものがあったので掲げてみる。

糺の森 賀茂川と糺の森  京都市 (平6.4)


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