天満宮と飛梅

謡蹟めぐり  老松 おいまつ

ストーリー

都に住む梅津某は、北野天満宮の夢のお告げを蒙り、筑前太宰府の菅原道真の廟所安楽寺に参詣します。
初春の長閑な境内で老人と若い男が、咲き盛る一本の紅梅に花垣囲いをしているので、有名な飛梅のことを尋ねると、若い男がこれは紅梅殿と崇めているご神木であると言って、飛梅という無配慮な呼び方を咎めます。
また、老人が傍らの松の老木を指してこれは老松と言い、やはりご神木で紅梅殿と共に天満宮の末社として祭られていることを説明します。そして、梅と松の徳を唐土の始皇帝の故事などを引いて物語るうちに姿を消します。
梅津某がこの奇特を喜び、その夜松蔭に旅寝していると、老松の精と紅梅殿の精が姿を現して、神々しい舞を舞い、御代を寿ぎます。(「宝生の能」平成9年2月号より)

安楽寺(太宰府天満宮)、紅梅殿と老松、北野天満宮 (平13・4記)

藤原時平の讒言により、太宰府権帥(ごんのそつ)に左遷された時道真は57歳であった。わずか数人の士卒に護られ、男女の二児を伴って京都を出発する。道真の生誕地とも言われる管大臣神社の北にある紅梅殿神社(または北管大臣神社)があり、管公の父是善を祀るが、その頃の管公の邸址で、管公はここで
   東風(こち)吹かば匂いおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ
の有名な歌を詠んだと伝えられる。

本曲の狂言の語るところによると、配所で管公がこの歌を詠むと、この邸の紅梅が配所まで飛来したという。この梅は配所の榎寺にあったが、太宰府天満宮が造営された時ここに移されたといい、今も大勢の参詣客の目を楽しませている。曲中に安楽寺とあるが、道真を葬った寺と言われるが、後に焼失し、ここに太宰府天満宮が建てられたと伝える。
境内には「東風吹かば・・」の歌碑も建っている。
一方桜も同じ所にあったが、歌に詠まれなかったのを嘆き一夜のうちに枯れてしまったという。このことを聞いた管公が
   梅は飛び桜は枯るる世の中に 松ばかりこそつれなかりけれ
と詠むと、これに感じた松も一夜にして配所に生育したのが追松すなわち「老松」であるという。残念ながら先年枯死して今は跡方もない由である。

菅大臣神社 菅大臣神社 京都市下京区菅大臣町 (平8.4)

紅梅殿神社 紅梅殿神社 京都市下京区管大臣町 (平8.4)

天満宮と飛梅 太宰府天満宮 太宰府市 (平11.11)

東風吹かば歌碑 「東風吹かば・・」の歌碑 太宰府天満宮境内 (平11.11)

曲中に「諸木の中に松梅は、ことに天神の御慈愛にて紅梅殿も老松も皆末社と現じ給へり・・」とある。前後の関係から安楽寺(太宰府天満宮)の末社と考えられるが、天満宮でいただいた略記にはそれらしいものは見当たらない。
しかし京都の北野天満宮には末社として、紅梅殿、老松社、白太夫社、伴氏社など道真に関係のある末社、摂社があるので付記する。
紅梅殿については写真は失念し、また略記にも説明がない。
老松社は道真の家臣島田忠臣翁祀る。道真が自分の無実を天の神々に訴えるため天徘山に登った時、公の笏を預かって供をした。後に道真はこの忠臣に松の種を持たせこの地に撒くよう託した。道真公の神霊がこの地に降臨するとき多数の松が一夜にして生じたという。
白太夫社は道真に最後まで仕えた白太夫を祀る。
伴氏社も道真公の母君を祀る。

北野天満宮 北野天満宮 京都市上京区 (平12.8)

老松社 老松社 道真公の家臣島田忠臣を祀る 北野天満宮末社末社 (平12.8)

白太夫社 白太夫社 道真公の守り役白太夫を祀る 北野天満宮の摂社 (平12.8)

伴氏社 伴氏社 道真公の母君を祀る 北野天満宮末社 (平12.8)


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