玉津島神社

謡蹟めぐり  鸚鵡小町 おうむこまち

ストーリー

陽成天皇が歌集編纂にお悩みになっていらっしゃいます。そんな折、昔宮廷にときめいた女流歌人小野小町が今は百歳の老婆となり、憔悴して関寺辺りをさすらっているという噂をお聞きになり、憐れみの御歌を与え、その返歌を得ようと勅使として新大納言行家を差し向けます。
行家が関寺辺りまで来ると老いさらばえた小町に出会います。「雲の上はありし昔にかわらねど見し玉だれの内やゆかしき」の御歌を詠み上げると、しばらく考えた小町は「内や床しき」の一字だけ変えて「内ぞ床しき」として歌を返します。不審がる行家にこれは歌道の作法の一つで鸚鵡返しであると説明し、歌道についても語ります。そして行家の所望に応じて以前在原業平が玉津島明神に詣でた際、舞ったという法楽の舞を舞って見せます。かくして日が暮れかかったので行家は都へ帰り、小町は草庵へと戻ります。(「宝生の能」平成10年3月号より)

玉津島神社・和歌の浦  和歌山市 (平9・3記)

曲の中に、小野小町が業平が玉津島に参詣の由を聞き、自分も参詣を思い立ち、夜の中に都を発ち、稲荷山、萬葉の里、和歌の浦、吹上のはまを通って玉津島に参った旨の記述がある。従ってこの神社は小野小町にも関係深い神社であり、その故もあってか境内には小野小町袖掛の塀が見られる。

玉津島神社 玉津島神社 神功皇后、衣通姫を祀る 和歌山市和歌浦中 (平6.5)

小野小町袖掛けの塀 小野小町袖掛けの塀 小町参詣の折、袖をかけたのであろうか 玉津島神社 (平6.5)

この神社の近くは和歌の浦となっており、風光明媚、古来から多くの文人墨客が訪れ、文化の香り豊かな土地として、多くの人々に親しまれてきた。本曲に引用されている
     和歌の浦汐満ちくれば片男波 芦辺をさして田鶴鳴き渡る
は本曲にも登場する山部赤人の和歌であり、この歌を刻んだ歌碑が近くの塩釜神社入口の右手、小高い岩山の裾にあるとのこと。調査不足のため見逃してしまった。

その替わりという訳でもないが、山部赤人のもう一つに有名な歌
     田子の浦ゆ打出て見れば真白にぞ 富士の高嶺に雪はふりける
の田子の浦の写真を掲げてみよう。

赤人の時代には田子の浦も美しい砂浜や松原が続いていたのであろうが、現在は製紙工場の煙突が林立し、ヘドロの海になっているというイメージが強かったので今まで訪ねたことはなかった。
今回たまたま伊豆に住む弟のところを訪ねた折りに、希望して彼の車で案内してもらった。海岸に至るまでの道が複雑でどこをどう通ったのかよく分からないが、それでも「港と富士の見える公園」に行き着いた。有り難いことに高い展望台が造られていたので、そこに上るとその名のとおり、富士山と田子の浦港を一望することができた。とても三保の松原から眺めるような訳にはいかないが、それでも田子の浦から海と富士山を眺め、赤人の往時を偲ぶことが出来たのは大きな収穫であった。

田子の浦 田子の浦より望む富士山 富士市 (平9.2)

陽成天皇御陵 (平9・3記)

この曲のワキが仕える陽成天皇の御陵が京都市左京区浄土寺真如町にあるのでその写真を掲げてみる。
近くには真如堂、東北院、南禅寺、平安神宮など数々の名所、謡蹟がある。

陽成天皇御陵 陽成天皇御陵 本曲のワキは陽成天皇に仕える 京都市左京区浄土寺真如町 (平8.4)


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